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沖縄紀行2





02年11月14日から18日まで

 また、沖縄に行こうと思った。

  決して、心に問題を抱えてるわけでも、疎外感を味わっているわけでもない。 仕事がそんなに大変だというわけでもないのだが、何か安らぎをもとめたかった。 沖縄には、なにか安らぐものがあると信じている。 だから、また友達を頼って訪れることにした。 金曜と月曜を休みにして、木曜の晩に羽田を発つ。 出張応援価というJTBの格安チケットで、この季節、往復航空券と、一泊つきで 3万円弱。最近、東京と神戸をよく往復しているが、一泊つきを考えれば、こちらの ほうが安いし、現地までの時間もほとんど変わらないのであるから、沖縄に行くという のは、ふと関西に行くのとぜんぜん変わらないのである。 さて、沖縄でのんびりするとしよう... と、いうのは建前だけで、前回の沖縄行でもお世話になった友達は、オーストラリア 留学から帰ってきて、なおパワーアップしているようであるし、なんといっても、 彼女の行動力にしたがって、普段ただ漫然と都会の暮らしをしている自分へ、いくら かの刺激を与えようというのも目的だったりするのである。 もうひとつ贅沢をいえば、わたしにとって沖縄は、自分の趣味のひとつである近代 日本史の舞台として大変興味深い地でもある。また、沖縄には世界最大規規模の水槽 にジンベイザメが3匹も泳ぐ水族館ができて話題にもなっている。 のんびりどころか、火の中に飛び込みにきたといっても良い。 安らぎは、休憩からのみやってくるものではないと思う。 さて、どんな按配となったか、つれづれに綴ってみようとおもう。 1.ひめゆりの塔  ここを訪れるのは、4回目であろうか。  金曜日、さすがに友達は仕事があるから、昼ごはんを彼女の職場の人たちと食べたあと、 彼女の車をかりて、渋滞の中ひとまずやってきたのである。 はじめてきたときは大学生で、特に深い印象はなかった。 2度目は新米社会人で上司に連れられてきた。 3度目は前回の旅行で、友達の学校の先生をしているお姉さんと来た。彼女はなんと、 この地にくるのは初めてだという。車も持っているし、来ようと思えばわずかの時間で 来ることのできるこの場所に、どうしてもこれなかったという話に、とても驚くとともに、 この問題のおくの深さを痛感した。 そして、今回である。 一人で黙想し、お祈りをした。 なにかとてもつらい気分になった。 もう少しでしゃくりあげそうだった。 どうしてそうなったのか、わからない。 ただ、とてもつらかった。 歳がいったのかもしれない。 お賽銭箱に100円をいれようとしたら、 職員の人が来て、箱ごともっていってしまう。 おいかけるのも変かと、ポケットにしまった。  わたしは、あたらしい平和記念館が好きになれない。 今回は時間もなかったこともあるが、行かなかった。 あの建物には左翼のにおいがぷんぷんしている。 沖縄にイデオロギーを、左はもちろんのこと、右の思想も持ち込んでほしくない。 戦争について、現地の人々が受けた悲惨な出来事として、故人を敬いつつ、伝えていただき たいのである。 夜、友達と再会し、車を返す。 ひめゆりの塔にだけ行ったといったら、彼女は「おまいりしてくれてありがとう」と言った。 ここは、沖縄である。 2.高速道路 ひめゆりの塔に行くのには地道を使った。ちんたらちんたら、のんびりのんびり行った。 「美川憲一郎来る!」なんてポスターがあちこち張ってあるのが、ゆっくり行くものだから、 よくわかる。旅の楽しみ方はいろいろあるものだ。 ひめゆりの塔でしばらく時間を過ごしていて、ふと時計を見ると、もう待ち合わせの時間に 40分しかない。待ち合わせは琉球大学構内である。マズイなと思いつつ、今度は高速道路 を使うことにして駆け戻る。高速の入り口までゆっくり行って、高速を疾走。3分送れて たどりついたが、彼女はまだ来ていなかった。 この高速道路。採算性だけとったら、おそらく赤字であろうが、沖縄には車がほとんどの 移動手段であり、一般道があれだけのんびりしていることを考えれば、あの高速道路は 本当に必要だ。急ぐ場合と、のんびりいく場合を、区別できるのはうれしい。 翌日、彼女は彼女の友達に言った。 「すごいの!3分遅れで来てくれたのよ!」 沖縄の時間は、ちょっとゆっくりしている。 3.ホテル  2泊目にとまった沖縄市のホテルの時計が、3〜5分遅れていた。 モーニングコールで起きて、テレビをつけたら、時間が進んでいる。あれ?とおもって、 ベッドの時計をみたがあっている。つまりテレビだけが早いのだ。 ん?テレビの時計が進んでいるわけがない。この場合、多数決は成り立たない。 ホテルの人にきいたが、気がついてなかったとのこと。 朝の5分は大きいが、だれもいわなかったということは、やはり沖縄の時間なのだろう。 一緒に水族館に行った女性の言葉、 「わたしが車を歩かせてたら...」 とても気に入ってしまった。 まったく、この地にぴったりの方言?である。 4.ライブハウス、クラブ、プールバー??  沖縄市のライブハウスに連れて行ってもらう。 給料日あとの週末ということで、米兵が無茶苦茶多い。 みんなデカイのに良く動くやつが多い。 そんな中、現地のバンドが英語でなにやら言いながら歌ってる。迫力満点! そのあとはアイリッシュパブ。一転して物静か。カウンターで東京から来たという女性が 働いている。沖縄で住むということの感想を聞く。 フォスター基地の正面にあるプールバー?(ビリヤード台が一台あったから、こういっておこう) に連れて行ってもらう。若い女性が元気だ。ちょっと元気すぎるのもいたが、長崎出身だからと する意見と、いやもうウチナンチュー(沖縄の人)になってるとする意見がでていて面白い。 彼女の友達には、米兵につながる人がいて、この店でも挨拶をする。彼は物静かで、その挨拶 以外、「あえてよかった、さよなら!」が唯一の会話だった。 店を出て、ちょっとご飯を食べ、クラブにでかける。普段絶対行かない場所であるから、興味 津々。またしてもデカくてよく動く人たちがわんさかと動いている。 わたしは、そのあと疲れて午前3時に退散したが、案内してくれている友達はそれからまた でかけたそうな。沖縄の時間は5分どころか5時間おくれてるのだろうか? ともかく、沖縄の夜は元気である。 彼女と、彼女の仲間だけかもしれないが... 5.米軍基地  彼女の基地で働く友達に案内してもらって、米軍基地のクラブでご飯を食べる。 食べ応えのあるステーキ。マッシュポテト。にんじん。肉はいけたが、他はいまいちであった。 そのあと、車で基地内をぐるっとまわる。見晴らしの良い丘に立っていて、那覇市が一望できる。 米兵の居住区が広がり、まさに日本の中にアメリカがある。  沖縄のことを外野が語るに、いろいろ勝手なことを言うが、現実、あれだけ多くの人が基地で 働いている現状を見逃すわけにはいかない。かといって、現地の人が米兵とフレンドリーかといえば、 皆がみなそうでもない。なにせ、えらそうにしている米兵は、そんなに評判の良い存在とはいえない。 友達と、「だからあなたは世界中で嫌われる!」「私はあなたが大嫌い!」ということを英語で 書いて、カードやTシャツを売ればおもろいななんて話をした。 朝日新聞あたりと結託して、つくってみるのもおもしろいのではないだろうか。 6.沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館   これは掛け値なしにすごかった。 ジンベイザメが3匹、マンタレイも泳ぐ大水槽であるが、本当にびっくりしたのは、小型のエイが 編隊を組んで悠々と泳ぐさま。かなり長い間みていたが、見飽きなかった。 一緒に行った個性あふれる3人の女性と、なぜか横を向いている男性ひとり。 彼女たちは、それぞれ、芸術家、空手家、そして行動派国際人。 寡黙だけれど、暖かみのある彼。 みなさんそれぞれ楽しく、やさしい人たちでした。 入場料は大人1800円だが、年間パスが3600円。現地に住んだら絶対これをかって、 半日くらいエイをみていたいとおもう。 車を「歩かせて行って」である。 7.帰京  あっという間に時間は過ぎ、16時20分発の全日空機で沖縄をあとにした。  新垣製菓のちんすこうや、水族館で買ったエイのぬいぐるみとともに。 目的は達成された。 つまり、わたしはとても疲れたのであるが、心の中がなにかバシャっと洗われたのだ。 今回の日記を読んでみても、心が洗われるようなねたは無いような感じだろう。 たとえば東京の暮らしに満足している人には、何のことやらぜんぜんわからないと思う。 普段、ひとの波をかき分けるようにして通勤し、ほとんどオフィスの中で頭を使って 仕事をし、また電車と人にもまれて帰ってきて寝る生活のなかで澱んだようになって いる心が、ゆっくり流れる時間と、なにかほっとさせてくれる人々の中ですごしたと いうことだけで、ちょっとばかりかき混ぜられたのではないか。 今回もいろいろと連れて行ってくれた律子さんと、あたたかく迎えてくださった現地の お友達に感謝しつつ筆を置きたい。  沖縄。  こんどは、もうすこしインターバルを小さくして訪れてみたいとおもう。 了
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